糖の化学
多機能な生物由来原料の創出糖の化学的作用により、さまざまな用途の生物由来原料が生み出されます。
Seppicではこの化学の応用を、糖分野の包括的な知識とグリーンケミストリーの12ヵ条に基づいて構築しています。これには、糖のサプライチェーン、糖とその派生物の分子構造および化学特性の理解、加工、分析方法など、エコシステム全体が含まれます。さらに、最終製品に配合される成分の機能性や性能(起泡性、湿潤性、ハイドロトロープ、可溶化、洗浄性、乳化性、生物活性など)をマスターすることにまで及びます。
糖の化学とポリオールの化学をマスターすることで、非イオン性界面活性剤の3つの主要なファミリーの創生に成功しました。
- ソルビタンエステル
- アルキルポリグリコシド(APG)
- ポリオールポリグリコシド(PPG)
糖の由来
糖は、多数のヒドロキシル基を持つことから、バイオ界面活性剤の開発に適した極性原料を形成しています。
原料である糖は、通常、小麦デンプン、トウモロコシデンプン、マニオク、ジャガイモなどの植物由来と、カバノキなどの広葉樹樹皮のヘミセルロース由来があります。その構造は、グルコースやキシロースのほか、ソルビトールやキシリトールなどのポリオール由来など、多岐にわたります。化粧品市場向けにキシリトールベースのポリオールポリグリコシドを製造した最初の企業はSeppicでした。
糖の加工
糖とその派生物の開発は、一般的な植物由来の原料採取から、生産副産物のリサイクル、生分解性原料の最終消費まで、持続可能な形で行われています。
Seppicではこの技術の開発にあたり、糖の反応に関する専門知識と、その反応から得られる成分の性能を評価する手法を組み合わせました。そのためには、反応性を最適化し、反応における化学量論をコントロールし、原料の最終的な効果を狙うために、「良い糖」として適切な構造をいかに選択するか理解することが必要です。
Seppicでは還元糖のグリコシル化およびソルビトールのエステル化を専門としています。これらの変換は無溶媒で行われ、グリーンケミストリーの原則を遵守しています。糖が結合する分子(脂肪カルボン酸や脂肪アルコール)によって、アルキルポリグリコシドやソルビタンエステルなど、さまざまな種類の非イオン性界面活性剤が生成されます。還元糖とポリオールの反応により、親水性の有効成分、つまりポリオールポリグリコシドの形成が実現します。糖の化学は、実に多彩な可能性を秘めているのです。
グリーンケミストリーと持続可能な化学 グリーンケミストリーは、1998年に発表された12ヵ条(Anastas, PT; Warner, JC Green Chemistry: Theory and Practice, Oxford University Press: New York, 1998)に基づき、安全で環境にやさしい化学反応に向けて分子レベルでの技術革新を進めています。この概念は、持続可能な化学へと発展し(P. Marion, B. Bernela, A. Piccirilli, B. Estrine, N. Patouillard, J. Guilbot, F. Jérôme. Sustainable Chemistry: How to produce better and more from less?, Green Chem., 2017.19, 4973-4989, Royal Society of Chemistry)、Seppicではこれに全面的にコミットしています。持続可能な化学は、原料の由来や供給、製造工程、社会的・環境的影響、原料の使用終了に至るまで、バリューチェーン全体を考慮したものです。 SeppicはAssociation Chimie Du Végétalのメンバーです 詳細は www.chimieduvegetal.com をご覧ください。 |
親油性乳化剤ソルビタンエステル
ソルビタンエステルは、適切な触媒の存在下、ソルビトールをエステル化することで得られます。再現性のある組成の原料を得るためには、その複雑な反応媒体を完全にコントロールする必要があります。
ソルビタンエステルは、化粧品や皮膚治療に使用される親油性乳化剤です(例:Montane™)。また、非経口投与薬の乳化剤としても選ばれています(Montane™ PPI)。
多様な特性を持つアルキルポリグリコシド
アルキルポリグリコシド(APG)は、還元糖を過剰な溶融脂肪アルコールでグリコシル化することにより得られます。この反応により、アルキルポリグリコシドと同時に水が生成され、水は徐々に除去されます。余剰の脂肪アルコールについては、長鎖、短鎖を問わず、最終的な界面活性剤に求められる特性に応じて、保持するか蒸発させるかを選択します。Seppicでは、乳化剤(長鎖脂肪酸アルコール)を製造する際に発生するバイオマス残渣を、メタン化プロセスにより電力や農業用天然肥料に再利用しています
脂肪アルコールが少なくとも14個の炭素原子の長鎖を含んでいる場合、APGは乳化特性を持ちます(Montanov™、Fluidanov™など)。さらに、Montanov™ 68やMontanov™ 202などの一部のSeppicのAPGは、化粧品用の乳化システム内で安定した液晶を生成する構造を持っています。これらの液晶は、角質層の脂質(角質細胞間脂質)に近い層状構造を有しているため、皮膚の脂質と相互作用することで再構築性を発揮します。
脂肪アルコールが14個未満の炭素原子を含む短鎖の場合、APGは可溶化、ハイドロトロープ(Simulsol™ SL 7 Gなど)、湿潤または起泡(Oramix™など)特性を備える水溶液として提供されます。これらの生物由来の界面活性剤は、主に化粧品や皮膚医薬品の処方(洗顔ジェル、シャワージェルなど)、あるいは洗剤などに使用されています。
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Montanov ™乳化剤のライフサイクルの最適化 Montanov™乳化剤の製造工程で発生する植物性バイオマス残渣は、製造工場近隣の農場で再利用されています。この残渣はブタの堆肥と混合され、消化装置に投入され、バイオガス(メタンとCO2)を生成し、発電に利用されます。非揮発性成分であるコンポストは、農場で天然肥料として使用されます。焼却による破壊という従来のプロセスに比べ、2017年に開始したこのリサイクルプロセスでは、年間約100トン相当のCO2排出を削減することができます。 Montanov™製造工程から排出される植物性バイオマスの再利用 |
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ポリオールポリグリコシド
ポリオールポリグリコシドは、還元糖、例えばグルコースを、キシリトールなどのポリオールの存在下でグリコシル化反応させ、最終生成物を水で希釈することにより得られます。
ポリオールポリグリコシドは、親水性の有効成分を生成するために用いられます。例えばキシリチルグルコシドは、その優れた保湿効果により皮膚の表層に作用し、さらに深部では再構築効果を発揮します(Aquaxyl™)。Seppicでは、こうした生物由来の有効成分として、65以上の特許を取得しています。
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